徒弟制度の変化と教育サービスの成熟化
デジタル化の荒波を受けない伝統的な手仕事分野
近年話題になった代表的な「手に職」分野に、美容師と料理人がある。
いずれも「カリスマ美容師」「料理の鉄人」としてテレビで注目を集め、職人がタレント化し、有名にもなり、お金も稼げる人気職業となった。
美容専門学校、料理専門学校とも、少子化で経営難に陥っている専門学校が多い中で生徒の集まりも好調である。
美容と料理、いずれもデジタル化の影響の少ない伝統的な職人的な世界だ。
人間の持つ美や食の願望・欲望は本源的で、本質として画一化、標準化はこばまれる。
こうした食・衣・医療・健康・美容・交流などの世界は、個別性が高く、標準的なものでは満足できないオーダーメードや個性的なものへの欲求があり、手仕事の世界である。
また、もともと工業的なプロダクト化には限界があり、手仕事の要素が強い住宅建築は、多くの職人の仕事の集積であり、不況で現在は低迷しているがなくなることはない世界である。
職人の世界特有の徒弟制度
伝統的職人の世界は、基本的に個人の親方によって現場の中で指導されている。
板前の世界にしてもそうだが、一人前になるのに、長いステップと時間がかかる。
どうしても若い年代で入らないとならない世界でもある。
また、学校ではないため、すべて技術は先輩や親方から、自分で見て学び、盗んでいかなければならない。
中には、長い丁稚奉公を維持するために意図的に教えないところもある。
このような非効率な面とともに、弟子入りには、優れた指導者から直接学べる利点もある。
技術だけでなく、職人としてのあり方や仕事への姿勢は人生そのものの大学なのかもしれない。
職人としてどのような親方から学んだかは、その人の職人としての人生の基本をつくる重要な柱となる。
そのため、修業を重ねる職人は、何人もの親方から学び、いいところをとって独立していく。
技術習得期間の短縮化と労働条件改善の欲求
徒弟制度の難点は、あまりに時間がかかることと、労働条件の悪さだ。
よりシステム的に短時間で学びたいというニーズがあり、封建的な丁稚奉公から近代的な雇用にという要求がある。
求人募集も、個人としての親方制では人が集まらず、企業的な組織への脱皮が求められている。
そのため、あいまいな手当てではなく、明確な賃金の規程を設けることや、社会保険の整備が求められている。
サラリーマンだった人には考えられないような長時間、低賃金の仕事も多い。
このような状況から生まれてきたのが、専門技術に関するスクールだ。
私立の専門学校や民間スクール・講座で、実践的な技術指導を行う。
技術習得を体系的に短期間で学べる利点がある。
また分野にもよるが、未経験の弟子入り路線だと、時給のアルバイト賃金であるが、専門学校を出ていれば社員として就職ができる場合もある。
実績のある専門学校・スクールでは、就職先紹介や仕事の紹介機能がある。
この部分の付加価値が高く、学校の実績の差が出るところでもある。
資格関係で特にそうだが、資格取得の勉強のみを目的とし、資格による開業指導までしないところが多い。
普及化した資格では、開業ノウハウがポイントである。
また、アコガレ型職業というのがある。
いわゆるカッコがいい職業であるが、この関連の専門学校・スクールも多い。
授業料も高いところも多いので、出口実績を十分調べる必要がある。
労働条件の改善については、まだ不十分な実態ではあるが、個人経営から企業による組織的な事業へ発展させているところでは、近代的な雇用システムになっていると思われる。
事業の拡大、多店舗化のためには、システム的な人材育成が不可欠であるからだ。
「教えない」「長く低賃金で使う」から、
「教育して企業組織の核になる人材を育てる」「独立心・やる気のある人材を短期に育て、統一ブランドでネットワーク的に展開する」方向が出てきている。
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