「アナログからデジタルへ」激変する職人芸
アナログ型手仕事の世界
デジタル型の「手に職」ブームの一方、従来のアナログ型の手仕事の世界はどうなるのであろうか。
「手に職」をつけるためには、長い年月と費用を費やさなければならないものもある。
それだけにその選択には慎重にならざるを得ない。
廃れていった仕事として、印刷業界の写植オペレーターがある。
写真植字機で文字を入力し打ち出し、印刷の版下制作に関連した仕事だ。
この分野がDTP(デスク・トップ・パブリッシング)という卓上のコンピュータによる作業に置き換わってしまった。
写植オペレーターからDTPオペレーターに転換していければいいのだが、中にはついていけない人も出てくる。
また、仕事の内容変化でデータとしてまとまらなかったものに地図制作者がある。
美しいビジュアルな地図は職人芸として今も残っているが、制作方法は激変している。
デジタルマップ化で、地図の制作現場がパソコン入力の現場に変わっている。
地図は描くものからデータを入力するものに変わってしまった。
当然デザイン的な地図はあるが、それもコンピュータ上で、デザインソフトによりビジュアルなデザインを制作する仕事になっている。
製造業の世界でも変化が激しい。
多くの工程が自動化されてしまった。
自動化できにくい金型の製作加工や金属加工の職人芸の世界でも、ロボット化する動きがある。
アナログ的な手の動きをデジタルデータとして保存し、再現する。
職人の技の保存になるが、同時に無制限にコピーされる可能性もあり、多くの職人たちが不要になる恐れもある。
デジタル化してもアナログの基本が生きる分野
デジタル化の波が、機器や道具をすべて変えてしまい、その変化についていくのが大変な時代となった。
しかし、機器がデジタル化し操作が容易になった半面、基本のアナログの要素が生きている分野もある。
たとえば、ビデオの撮影・編集の仕事がそうである。
ビデオカメラが、デジタル化し、素人でもある程度の品質の映像が撮れるようになった。
機器の価格も安くなり一般でも手の届くものになった。
映像のデジタル化にともない、編集作業もAV対応のパソコン1台で自宅で編集できるようになった。
しかし、撮影という基本作業自体は手作業であり、カメラワークにアナログの基本は生きている。
コンピュータ操作の障壁も低くなってきており、道具の変化とそれにともなう制作方法の変化に対応していけばいい。
むしろ、デジタル機器しか知らない人が基本技術を習得していないため、高品質な制作ができないことの方が問題は大きい。
これは、CGデザイナーなどのデジタルクリエーターに共通していえる。
コンピュータは確かに基本技術習得の合理化を行い、ソフトや加工しやすい素材データ、フォーマットの充実で作品は作りやすくなっている。
しかし、クリエイティブの世界の基本は独創性や芸術性であり、個人としての感覚、才能に基づくものだ。
道具以前のアナログとしての絵を描く力、デッサンカ、デッサンのもとになる観察力、色彩の感性が重要なのである。
道具を道具として使いこなせれば基本は変わらない
結論からいえば、道具がデジタル化しても、道具として使いこなせればいい。
グラフィックデザイナーの中には、機械は嫌いという人も多かったと思うが、もはやコンピュータを使い、デザインソフトを使いこなさなければ仕事がない時代になった。
文筆業も著名作家でない限り、ワープロのデータで渡さなければ仕事がこない。
音楽の世界もデジタル化で激変している。
コストのかかる生の演奏がどんどん減っている。
デジタル化で、音の合成・加工が容易になり、またインターネットのMP3に代表される音声圧縮技術の進歩により、著作権がおびやかされる状況にある。
道具のひとり歩きだ。
アレンジャーやミキサーの現場も、道具としてのデジタル化が進行しているが、基本となるのは音の感性であることに変わりはない。
ただし、シンセサイザーなどのデジタル音楽機器を最初から使ったデジタル音楽など、デジタル機器による新しい音楽ジャンルを生み出している場合もある。
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